DV(ドメスティックバイオレンス)とは、配偶者または内縁関係の間で起きてしまう暴力のことで、主に殴る蹴るなどの身体的暴力の意味合いで使われている言葉です。精神的暴力や経済的暴力、性的暴力などの意味合いを含む場合もあります。
その被害件数は減ることを知らず、年々増加が止まりません。
身の危険もあるため、起きてしまった場合はパートナーからただちに離れる必要がありますが、他の原因による別居や離婚などと違い、2人での話し合いがまともにできないので、簡単に別れられずに被害がエスカレートしていくのを耐え続けている人が非常に多いのが現状です。
私も実際、過去に7年近くDV被害を受けていた経験があり、日々エスカレートしていくDVに限界以上のものを感じて、ほとんど着の身着のまま家を飛び出すまでにはとても長い時間を要しました。
当時DVを受けている中で、色々調べていくうちに知ったDVシェルターの存在。
DVに悩む方は一度は耳にしたことがあるかと思います。
私は幸い実家に身を寄せることができたので、DVシェルターのお世話になることはありませんでしたが、緊急事態の時には利用するはずだった場所です。
ですが、DVシェルターについてはあまり公に語られることはなく、その実態を知らない人がほとんどだと思います。
そして、現在シェルターの運営には様々な問題が浮上しているそうなんです。
そこで今回は、このDVシェルターの実態ついて詳しくご説明するとともに、抱える問題点についても触れていき、DVに悩むみなさんの知識の1つになれれば…と思います。
そもそもDVシェルターとは?
DVシェルターとは、DV被害者のためのいわゆる駆け込み寺のような場所で、加害者である配偶者から隔離し、保護する施設です。
シェルターには行政が運営する公的シェルターと、民間団体が運営する民間シェルターに分かれ、全都道府県に1か所以上存在しています。
どちらも保護だけでなく自立へ向けた相談やサポートなど、様々な援助をおこなってくれます。
また、所在地はすべて関係者、利用者以外非公開になっているため、加害者に見つかることなく安心して過ごすことができる施設なのです。
入所条件はその緊急性。
限界や危険を感じたら、配偶者暴力相談センターや女性サポートセンター、また警察などの公的機関に相談ののち、相談員の判断で入所が決定します。
公的シェルターと民間シェルターの違い
<運営>
各都道府県、地区町村、警察などの公的機関
<利用料>
衣食住、相談料など基本無料
<利用条件>
DV被害の緊急性有り、法的に夫婦として認められている妻
<滞在期間>
原則として2週間
<施設数>
各都道府県に1か所以上
<生活>
・基本共同生活で他の利用者と相部屋の可能性もあり
・アパート・マンション型シェルターもあり
・携帯電話は没収され、外部との連絡を一切遮断
・外出は一切禁止
・食堂以外での飲食一切禁止
・入所者1人につき1人の相談員がつく
公的シェルターでは一切その存在場所の秘密の徹底を図るために、行動や持ち物の制限があり、生活にほとんど自由がありませんが、衣食住から訪問弁護士への相談などの費用は一切かかりません。
また、およそ2週間の滞在期間内に
・住民票発行禁止の手続き
・お金がない場合、生活保護の手続き
・裁判所への保護命令の手続き代行
・被害者実家への安全の配慮と保護命令後の支援調整を警察に連絡
・離婚調停への手続き代行や弁護士の紹介
・シェルター退所後の入居準備
・就職口の紹介、あっせん
・子供の保育園、学校の手続き代行
など相談員が親身になってサポートしてくれます。
<運営>
NPO法人、社会福祉法人などの民間機関
<利用料>
1日1,000円程度かかるところもある
<利用条件>
DV被害の緊急性有り、事実婚や付き合っている段階の人でも利用可
<滞在期間>
制限はなし
<施設数>
全国に115か所(平成28年11月現在)
<生活>
・老人ホームや児童養護施設の空き部屋を利用することが多い
・シェアハウス型も多い
・買い物も電話も基本自由(ただしDV夫への連絡や、居場所を誰かに教えるのは禁止)
・掃除や料理など当番制でおこなうことがある
・老人ホームなどの場合は、職員のお手伝いをおこなうことがある
色々な団体がそれぞれ運営しているため、施設や生活の形態も様々です。
利用料は無料…とまでいかない所が多いのですが、長期間滞在も可能なので、今後のことをじっくりと考える時間が持てます。
また、公的シェルターよりは自由もききますし、離婚へ向けてのサービスは民間シェルターの方が充実しているようです。
公的シェルターが抱える問題点
DVシェルター利用者は被害者なのに、自由なく制限だらけの生活に、まるで牢獄のようだと納得いかない人。
また避難はしたものの、まだ数日では離婚への心の整理がついていないのに、心理カウンセラーからとにかく離婚を強引に進められたり、シェルター専属の弁護士からは離婚の際のお金の話ばかりで、自分の気持ちを置き去りにされているような不信感を抱く人が多いようです。
原則2週間という短い期間で自立支援をしなくてはならないため、職員も入居者一人ひとりの気持ちを汲み取る余裕がないことが伺えますね。
民間シェルターが抱える問題点
<運営側が感じる問題>
民間シェルターの運営費用は、地方公共団体により大人1人につき7,600円、子供1人につき4,000円が支払われます。
これは裏を返せば、利用者がいないとお金が一銭も入らないことになり、DV被害者の命を守るためにほぼ365日24時間相談窓口を開いている施設にとっては非常に厳しい懐事情です。
また、もう1つ大きい問題があります。それは人員の確保です。
DV被害の多くが夜中におこなわれるとあって、24時間体制を取り続けたくても、2004年にDV防止法ができた当初からDV支援に立ち上がり働いてきた人たちの高齢化が進んでおり、50~70代が中心だと言います。
ですがいくら若者の人員を確保したくても、予算が足りない現状では難しい話。
このような状態が続けば、年々増え続けるDV被害者の命を、守れなくなってしまうかもしれないのです。
<利用者側が感じる問題>
DV被害者のほとんどが精神的に非常に弱い状態に陥っています。
言い方を変えれば、誰かの救いを求めており、洗脳されやすい状態になっていると言えるでしょう。
そういった弱みに漬け込み、救ってあげるという話から怪しい宗教に勧誘したり、言葉巧みな話術に騙されて受給している生活保護を奪われたり、施設の利用料が払えなくなると風俗などで働かせるなどの違法行為がおこなわれている施設もゼロではないようです。
これは、場所や内容を他言しないという秘密主義な施設だからこそあり得てしまうのですが、そもそも入居者はこのようなことを事前に知ることはできませんし、一度洗脳されてしまえば抜け出すのは困難を極めるでしょう。
終わりに…
いかがでしたでしょうか。
DVシェルターの詳しい内容がこの記事を通してお分かりいただけたかと思います。
私は最初、シェルターが公的や民間の2種類に分かれていること。
そして特定の施設で共同生活をするイメージだったので、マンションタイプがあったり老人ホームと一体化しているなど全く知りませんでした。
現在DV被害に悩んでいる方の中に、緊急避難先としてDVシェルターへの入所を考えている方が多くいらっしゃるかと思いますが、全く何も知らずに飛び込むのと、ある程度の知識があるのとでは違い、精神的な不安も少し軽減されるのではないでしょうか。
問題点はあれど、公的も民間もDV被害者の命を守ろうと動いてくれている、ありがたい施設です。
本当にお困りの方は、決して無理をして我慢せず、まずは公的機関に相談だけでもしてみてくださいね。