離婚多いですよね。
2015年の人口動態統計の年間推計では、3組に1組の割合で離婚しているそうです。
母子父子のひとり親家庭は、10件に1件。クラスの中に3~4件のひとり親家庭がある計算になります。
母子家庭が増える事により、珍しい事では無くなりつつありますが、偏見に悩むご家庭も少なくないのではないでしょうか。
今回は、母子家庭への偏見を経験した、私の経験談をお話します。
保育園での偏見
ひとり親の家庭では、母は必ず働かなければ生きていけません。
保育園に初めて入れた時、子供は1歳になる年でした。
本当は産まれた年から働きたかったのですが、産後の肥立ちが悪かった私はオークション等でコツコツと日銭を稼ぎながら生活をしていました。
やっと入れた保育園
母子家庭で保育園に入れるのは、割と容易な方です。
特に私の住んでいる地域では、それほど人口も多くない為、比較的安易に認可保育園に入る事ができました。
それでも、私からすればやっとの思いで入れた保育園。お金の無い1年間を過ごしていたため、「やるぞ!稼ぐぞ!」と前向きに。
子供は人見知りせず、誰にでも抱かれる赤ちゃんだったので、割と安心して預ける事ができました。
最初の仕事はコンビニのバイト
保育園といっても行事があります。
私は「母子家庭だからといって、子供の行事に参加出来ない仕事に就くぐらいなら、貧乏でも良い」と考えていました。
その為、コンビニでバイトをしながら日々を過ごしていました。
日中はバイト、夜は子供が寝てからオークションでの小銭を稼ぐ生活になったのです。
子供の夜泣きがひどくなる…原因は…?
そんな日々を過ごして3ヵ月。子供の夜泣きに悩まされるようになりました。
朝は保育園に行きたがらず、グズる様に。
寂しいのかと思って、帰宅後や休日は出来る限り一緒に居る様にしました。
違う時間に迎えに行ったら隔離されてた我が子…
そんなある日、仕事が早く終わり保育園へ。
お昼寝の時間だったので、そ~っと行って教室をのぞいてみると、グッスリ眠っている子供たちの中に私の子が居ない。
先生もいないので、ホールに行ってみると、そこには数人の子どもが寝かされていました。
そこにも先生はおらず、職員室へ行って声をかけると、慌てた様子。
「教室で寝ていなかったのでビックリしました~」と、何気ない会話のつもりで話しましたが、先生の顔面は蒼白。
「ちょっとグズってしまったので…」と、口ごもる様子に、違和感を覚えました。
夜泣きの原因は、保育園での半ネグレクト
これはおかしい…と思い、数日たってほとぼりの冷めたころ、また違う時間にお迎えに行ってみようと決意。
給食の時間に行ったのですが、やはり教室にはいません。
ホールへ行くと、また同じ子ども達が集められて給食を食べていました。
しかし、先生がいないので動物園状態。
何が起きているのか先生に問いただしても的を得なかったので、役所、周囲の父兄に相談した所、ホールに集められていた子どもは全て「母子家庭世帯の子」という事が判明。
一部の父兄から「片親の子と一緒にするな」というクレームがあった為、その様に対応していたそうです。
先生の手も足りず、その子たちは朝から晩まで、そこに居続けるのみでした。
園長の「母子家庭」を差別する対応
私を含めた該当の母子と徒党を組み、園長に事の真相を確かめる事に。
しかし全く対応してくれず、しまいには
「お母さん方、きちんとした職に就いた方がいいですよ。私は心配しているんです。子供たちがあなた方の様なパートやバイトの底辺に育てられる事が。」
という、何とも差別的な対応。
周りの母親は怒っていましたが、私は「そういう考え方もあるのか。子供が嫌な思いをするぐらいなら“きちんとした職”というのに就いた方がいいんだな」と判断。
保育園を変える事はもちろん、自分の職を見つめ直そうと決心しました。
新しい職と新しい保育園
私は医療事務の資格を4つとり、大きな病院で勤め始めました。
病院だと、土日祝日はお休みだし、子供との時間が取れると思ったからです。
新しい保育園も順調で「これこそ保育士さんだよね」と実感できる様子。
我が子も次第に落ち着き始め、そんな状態が2年続いたある日。
子供の爪噛みと母子家庭
担任から「お子さんが爪噛みをしています」という話が。
不安な状態がある場合、子供はよく爪を噛みます。
前の保育園に入ったころからだったので、気にはしていたのですが、次第に落ち着いてきていました。
そのことを担任に伝えると、大きなため息を一つ。
「あのねぇ、そういう事じゃなくて。母子家庭だから爪を噛むんだって言っているんです。お父さんがいないのが、寂しいんですよ、母親としてどうお考えですか?」
私は唖然としつつも気を取り直し、先生と話をしましたが「爪噛み=母子家庭」という固定概念は覆る事はありませんでした。
その後、保育園は変えませんでしたが、翌年に担任が変わると我が子の「爪噛み」は見事に収まりました。
職場での母子家庭に対する偏見
先述の様に、私は子供の為に医療事務として働きはじめます。
大きな病院だったので、同じように母子家庭の方も働いていて、安心する事ができました。
そんな中、異変は少しずつ、しかし確実に表れ始めたのです。
母子家庭に食堂での居場所はない!
勤務初日、食堂で食事を取ろうとすると「何やってるの!」という大声が。声の主は事務の先輩で「ここはダメ!入っちゃダメ!」と言われ、追い払われてしまいました。
訳が分かりませんでしたが(まぁ入っちゃダメなら別な所で。)と、あまり深く考えず、休憩室で食事をとる事に。
席につこうとすると、また別の声が。「そこは座っちゃダメ。座るならこっちね」と誘導されました。
ここでも(場所が決まっているのかな?)と思い、気にしませんでした。しかし、後から同僚に聞いた所、驚くべき実態が明らかに。
食堂でも休憩室でも「片親とは一緒に座らない」という暗黙のルールがあったそうです。
自分の居心地とかではなく、母子家庭の親と極力関わりたくないという真意からでした。
母子家庭の同僚に対する目に見えるイジメ
そんな環境の中、母子家庭の親同士仲良くなるのは時間の問題でした。
しかし、ぽつりぽつりと辞めていき、最後は私とAさんの2人だけしか残りません。
ある日の帰り、Aさんから呼び止められ、Aさんが今日付けで辞める事が判明。
どうしてかと尋ねると「イジメだよ、辞めてったみんなそうだった。あんたも疲れ果てる前に考えなよ」と。
母子家庭の親に対する、イジメまであったとは。しかし、食事の席ぐらいで怒るんだから、ありえるかも。
そう思いつつ、私はまだ自分の身に起こっていないのを良い事に、考えるのをやめました。
母子家庭が原因で私にふりかかるイジメ
翌日出勤すると、私の事務用サンダルが無くなっていました。帰りには、雨傘も。
(あぁ、こういう事か。)と思い、私物は全て鍵付きのロッカーに入れる事に。
靴も毎日持ち帰り、気持ち的には(取れるもんなら取ってみろ)と思っていました。
そんな強気な態度が気に食わなかったでしょう。1週間後、朝に出勤すると私のロッカーが壊されていました。
バールのようなものでこじ開けられた挙句、中はスプレー塗料でグチャグチャ。
入れていた子供との写真は、ビリビリに引き裂かれていました。
弁償と新天地へ
事務長に相談すると「そっかー制服もレンタルだしなぁ。ロッカーと制服代、12万の弁償ね」と驚きの言葉が。
「イジメなんです、物も無くなったりしているんです!」と必死に訴えましたが、糠に釘。
事務長は「母子家庭だから払えないとか、言わないでね」と、その場から逃げるように去っていきました。
この事で、私は転職を決意。今度は個人の小さな病院にしようと思いました。
小規模でアットホームな所であれば良いのではないかと。
離職後、1ヵ月で新しい職場が決まりました。
スタッフ人数は10人程度でしたが、20-40代前半で年齢も近く、楽しく働く事ができました。
最初の3ヵ月までは。
こちらでも母子家庭の偏見
スタッフ10人中9人が女性で、結婚しているのは7人。内、子供がいるのは1人。
母子家庭が大変だという訳ではありませんが、負担はかなりのもの。
子供が熱を出せば、保育園から連絡が来て迎えに行かなければいけません。行事があれば、休まなければいけません。
片親の私達は、それを全て自分たちでこなします。そんな私に対する、周囲の目は次第に変わっていきます。
「そんなに熱出すなんて、何かの病気じゃないの?」
「発達障害とか。母子家庭だとよくあるって聞くよ」
「誰かほかの人に頼めないの?」
そんな言葉を、事あるごとに言われるようになるまで、さほど時間はかかりませんでした。
週5日のパートで働いていたのですが「普段休んでいるんだから、これからは休みなしね」と、月~土曜日の出勤に加え、残業代は無し。
ハードな仕事に体調を崩してしまい、お休みの電話を入れると「これだから母子家庭は!」と、切られました。
仕事を変えよう
次第に私は考えるようになりました。私はどうしてこの仕事をしているのか。
子供の為に“普通”になろうとしていたのに、子供との時間を取れないこの生活に意味はあるのか。
そう考えると、もうそこにいる意味はありませんでした。私は在宅ワークとのWワークで働いていて、在宅だけの収入だと月12万程度ありました。
贅沢をしなければ生きていける額でしたし、日中仕事が出来るとなれば、もう少し収入は増える。
私は自営業で生きていく決心をします。
近所からの偏見
在宅ワークで保育園に入れる為には、民生委員からの認定が必要でした。
地元の民生委員と話し、仕事状況を見せる事で“第三者から働いている事を認めてもらう”という書類。
民生委員の方は、私を怪訝な様子でアレコレ尋ねます。
「仕事は今まで何してたの?」
「何でやめたの?母子家庭なのに」
「どうして母子家庭になったの?」
しまいには「どうせ彼氏に貢いでもらってるんでしょ。だから嫌なんだよ母子家庭は。こんな書類、必要なくなるんだから。」という一言。
この時すでに、この土地の母子家庭という偏見を痛い程分かっていた私は「それでもこの道を選ぶしかない」のだという思いで、相手の刺す様な言葉を呑み込んだのです。
他方からの偏見
日中から家にいる私の姿を、近所の人が見かける度に
「仕事は?辞めたの?」「在宅ワーク、なにそれ」という会話になります。
当時、SOHO、在宅ワークという言葉が出始めた矢先でしたから、片田舎のこの土地には、それを理解してくれる人はいません。
ある時友人から電話がかかってきて「あんた何やってんの!?」と怒られました。
話しを聞くと、どうやら私の事が噂になっており
「あの地区のあの人、昼間家にいて夜の仕事している。母子家庭だから男に頼ってるんだ」
という話が出ていると聞かされました。
そうでない事を友人に説明し、その友人は分かってくれましたが、そうした噂に振り回され、私から離れていった友人もいた事は事実。
けれど、そうした事実から私は「私の事を分かってくれる人が、周りにいてくれればそれで良い」と開き直りました。
部屋が借りられない…!
在宅ワークも多忙を極め、部屋の一室では足りない様になってきました。それでも、外で働いていた頃と比べ、子供と過ごす時間は潤沢にあります。
そろそろ事務所を借り従業員を雇いたい…と思い、まずは物件を探す事に。しかしここでまた、ひとつのハードルにぶち当たりました。
私に事務所を貸してくれる大家さんがいないのです。
正しくは「SOHO(在宅ワーク)で、社長が母子家庭の会社に部屋は貸さない」という事。これには驚きました。
せまい片田舎ですから、私の悪い噂がまだ残っていたのかもしれません。税金も払いその辺の男性よりも収入があった私。
収入証明を出そうが、納税の証書を出そうが、そんなことは関係ない様子です。
「スモールオフィス?在宅?なんでそんな信用出来ない仕事。しかも母子家庭でしょ。貸せない」という結論。
ある大家さんは、契約までした後に「あんた母子家庭なの!?この話は無し無し!」と、断られました。
どうして無しなのか、家賃も前家賃で6か月分入れたのにと聞くと
「金の問題じゃないんだよ。母子家庭ってのは、母親に問題があったから別れたんだろ?そんな人に貸せないよ~」
と鼻で笑われてしましました。
私なりの結論は引っ越しだった
現在、私はその土地を離れもう少し都会の政令指定都市に住んでいます。
ここでは、私の仕事にとやかく言う人はいません。
部屋を借りる時、前の経験から「在宅なんですけど…」とおそるおそる言うと「そうですか。」というあっさりとした返答。
子どもの学校も、大家さんも、近所の人もとても親切にしてくれます。
「田舎は親切、都会は冷たい」というパブリックイメージが、見事に崩れ去りました。
母子家庭で頑張るお母さん方に私は言いたい。私達は、どこへでも行けます。
もし、私の様に思い悩んでいる人がいるのであれば、引っ越しを考えてみて下さい。きっと、今よりつらい事はありません。
子供の事を考え、引っ越しとなると気が引けてしまいますが、まずは私達が笑顔で居られる事が子供の為。
偏見から逃れるには、土地ごとまるっと変えてしまうという手段もあるという事を、忘れないで下さい。
こんなにも沢山差別を受けることはない、片親でもそんなにひどい仕打ちは積重らならない